株式会社同位体研究所

食品分析法比較

安定同位体は、化学的指紋・・・生育環境の履歴

食品産業を例にとると、過去より各種含有成分や、化学物質の残留(農薬や抗生物質等)が広く分析されてきました。 各種細菌検査や、残留検査など食品安全に関わる理化学的分析は、現在でも食品分析の主流です。

この成分・残留分析は、サンプル中に存在する成分(化学物質)を検出します。 2000年以降、分析機器の発達によりごく微量しか存在しない元素の分析も可能となりました。 この微量元素分析は、生物(植物・動物)の生育環境の土壌中の微量元素の分布の差を利用して、産地の分析にも応用されています。しかし、やはり成分分析の主流は、残留や個別成分による食品の検査・評価でしょう。

微量元素分析

一方、1990年代後半から、遺伝子分析技術が食品検査にも応用されるようになりました。 これは生物の設計図である遺伝子の配列を分析する事で、種に固有の遺伝子や、外来遺伝子の検出(遺伝子組み換え食品)、牛等の個体照合などに応用されています。 この遺伝子分析は、品種や個体を識別するという点では、特異性も高く非常に有効です。 現在では、食品産業においても広く用いられています。

安定同位体分析は、もともとは生態系研究、地球科学、資源探査などに用いられていたもので、食品産業への応用が本格的に検討されはじめたのは、2000年以後です。この背景には、質量分析計の進歩もあります。同時に、2000年以降、食品の原産国・産地や生産方法についての表示偽装が相次ぎ、消費者から食品の生産履歴に関する管理強化の強い要望が出た事も背景にあります。 資源探査や、生産体系研究に用いられていた安定同位体比分析を、食品産業での検査に応用する事が研究され始められました。

成分・残留分析が、サンプル中の特定の物質を検出し、遺伝子分析がサンプル中の生物的品種情報を分析するのに対して、安定同位体分析は、サンプルを構成する組織中の分子がどのような環境から由来したものかを分析します。従って、同じ生物品種(例えば同じ米品種や牛品種でも国産と輸入品とでは、品種は同じでも、生育履歴が異なり、安定同位体分析では判別が可能となります)

つまり、

成分・残留分析
サンプルの中の特定の物質の存在
遺伝子分析
遺伝的指紋・品種
安定同位体分析
化学的指紋・環境/生産履歴

を調べるというものです。

食品分野でのさまざまな検査への適用の分類

上記のように、それぞれの検査には得意不得意があります。以下の表は、食品分野での各種検査への分析法の違いによる適用の可否を大まかにまとめたものです。(個別には、△や×となっていても特殊な方法により対応が可能な場合もありますが、一般的な可否を示します)

食品分野での分析検査については、それぞれの分析法が得意・不得意があります。 安定同位体分析は、そのなかでも生産履歴(トレーサビリティに関わる分野で特に強みを持ちます。)

そして、これの技術は、例えば餌の成分がどのように利用されるか、特定の成分の生物への吸収の増進や抑制などの生理機能を生体で追跡する場合、非常に有効な「トレースマーカー」としての機能も有しています。 例えば安定同位体により意図的にマークされた物質を食した動物が、その物質をどのように取り組み、分子に組み込むかなどの研究を可能としています。 安定同位体分析は、今後ますます大きな可能性を秘めています。

検査の得意不得意表

分析検査と体系認定(生産工程のシステム・記録管理)による高度管理

以上の分析検査は、それぞれ分析の対象とするサンプルを分析するものですが、これとは別に生産履歴について、原材料や加工、農法などの実際の工程などの記録や生産システムについて、品質管理の観点から、体系を実地に検証して、生産体系管理から食品の品質を保持するといういわゆる「体系認定」という手法があります。 これは現在のJAS法や、HACCPなどの危害管理手法です。

これらの分析検査と体系認定手法を組み合わせることにより、非常に高い精度の生産履歴の検証システムが構築できるでしょう。

どのように検査結果を判別に使うのか?

炭素、窒素、酸素、水素安定同位体比が、食品の化学的生産履歴として有効であるとして、それではどのようにして分析結果を解釈するのでしょうか。 検体を分析しても、得られるデータは、数値です。 さらに炭素、窒素、酸素、水素と異なる安定同位体比が、生産履歴の判別に複数で関与している場合、その判別はされに困難なものとなります。

実際の分析検査においては、得られたデータを用いて、そのデータがどのようなグループに属するか判断する為の作業が必要です。 例えば国産と輸入食品を判別する場合には、国産のものと輸入のものについて、あらかじめ安定同位体比のデータを得て、これを判別用データとして保持する事が必要です。

さらに多変量解析により判別分析等を行い、「判別式」を得る事が有効です。 統計解析で、あるデータが、どのようなグループに属するかを判別する手法を判別分析といい、この統計解析で、判別式といわれる数式が得られます。

例えばある食品の国産・輸入それぞれのグループについて、安定同位体比を変量とする判別分析を実施すると、判別式が得られます。 これに検査対象の検体の分析データを代入すると判別得点という値が得られます。 この値により、この検体が、国産、輸入のどちらに属するかを判別できます。 判別式による判別は、的中率というもので、精度が表され、実際にこの式により判別した場合、どの程度の正確性をもつかが示されます。 一般には、判別式としては、80%以上の有効性は必要でしょう。

また実際の食品産業用途で、判別式を用いた判別検査を行う場合には、90%以上の的中率は必要であると考えます。

このように、統計解析(多変量解析)を用いる事により、安定同位体比分析によるさまざまな判別分析が可能となります。(この多変量解析による判別分析は、安定同位体分析以外の産地判別検査である微量元素分析などでも既に用いられています)

遺伝子・安定同位体比複合分析による
シジミと海苔の産地判別検査受託開始

地理情報・安定同位体比情報・遺伝情報を統合
複合検査による高精度な産地判別が可能に