食品の産地判別、原料由来判別のパイオニア
がんばれ!東北 がんばれ!日本 同位体研究所は、産地の復興支援に取り組みます
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ワカメ(生、乾燥、塩蔵)の産地判別

wakame-area.gifわかめは、昆布、のりと共に3大海藻としての地位にある重要な海藻です。 年間の市場規模は約500億円程度。 供給の内訳は、中国産が50%、韓国が30% 国産が20%程度で、輸入わかめが全体の80%を占めます。 わかめは養殖ものが大半であり、国産わかめでも全体の95%程度が養殖ものであり、主たる生産地域は、岩手・宮城(三陸)が全体の約70%、鳴門(徳島・兵庫)で約30%です。 その他千葉、神奈川、三重、和歌山、佐渡、島根、山口、福岡、大分、長崎などでも若干の生産がありますが、生産量はわずかで主体は、三陸産と鳴門産となります。 鳴門わかめは、鳴門海域で生産されるもので、鳴門わかめと表示される約70%は、徳島県阿南市から鳴門市にかけての海域で生産され、残りの約30%は、兵庫県(淡路島・南鳴門町の播磨灘側が養殖場)となります。 韓国のわかめ生産技術や、中国のわかめ生産についても、もともと日本の技術により開発された経緯があります。 
わかめの収穫は、中国、韓国、日本ともに冬場が中心で1−4月に収穫されます。 

安定同位体比による国産と中国・韓国産わかめの判別

海水の安定同位体比は、外洋の場合、ほぼ一定であり、地域による差異はほとんどありません。しかし沿岸部で自生しているひじきや、沿岸養殖のわかめの場合、陸上由来の有機物や、表面海水温度、その地域の海域の閉鎖性などで、安定同位体比分布は地域で異なります。 つまり、沿岸部に生息する海洋性生物の場合は、陸上の農産物や畜産物と同様、安定同位体比による地域判別が可能となります。 安定同位体比を用いて、わかめや他の海藻を判別する上で、安定同位体比値の差異は、生育環境、特に養殖における生育環境の差異が大きなポイントを占めます。 まず海藻や貝などの成長で、生育時の海水温度は生物の酸素安定同位体比に影響を与えます。 より低い温度で生育した場合ほど、酸素安定同位体比は、高くなります。 この温度と酸素安定同位体比の変動を用いて研究されているのが、貝殻の酸素安定同位体比の変動による海域の水温変動です。 養殖にてほぼ水面付近で成長するわかめにとっても酸素安定同位体比は、成長時の海水温度におり異なる値を示します。 特に中国・大連地域は、1月の海水温三陸わかめ地域2-1.jpg岩手・宮城での養殖地域及びサンプル採取地点鳴門養殖地域.gif鳴門(徳島・淡路)地域での養殖地域とサンプル採取地点度は、1℃程度と非常に低い温度となる一方、鳴門地域では、3月の海水温度が最も低く9℃程度です。 このように生育時期の海水温度の差異は、酸素安定同位体比に影響を与えます。

炭素安定同位体比についても、わかめのように沿岸養殖による海藻生産では、生産地域による差異が見られます。 そして、沿岸養殖の場合、陸上より有機物が流入しており、窒素安定同位体比にも差異が見られます。 わかめの養殖地域について、国内では、三陸と鳴門地域が主要生産地域となりますが、鳴門地域は、瀬戸内という内海であり、一方三陸は太平洋の外洋性の海域となります。 このため陸上由来の有機物の海域での滞留が異なる事から、生育海域の差異が生じます。(窒素安定同位体比は、各地の湾内の環境調査指標にも使用されており、海水中の窒素がどの程度陸上由来のものであるかを示す指標となります。)
このように、沿岸にて養殖されるわかめの場合、生産地域は海洋でありながら、周辺の陸上での生産活動の影響も受け、生育地域に特徴ある安定同位体比分布を示します。 炭素、窒素、酸素安定同位体比という3つの安定同位体比の値を用いて、その分布の特徴を統計解析する事で、各産地の判別が可能となります。
また産地判別においては、それぞれの地域のわかめの値をもとに判別を行うため、標準となるわかめの由来は非常に重要です。 同位体研究所は、国内の三陸・鳴門判別の為、生産地において、自社にてわかめ、海藻、その他生物サンプルの収集を実施し、同時に採取地域のGPSデータを記録し、わかめ産地における安定同位体比データベースを構築しました。
satoura.gifkitanada.gifwakame.gif鳴門地区においては、主要な養殖地域である里浦、北灘、小松島、阿南のほか、淡路島の南淡路町など鳴門海域全域で、わかめの収集を実施。
三陸については、宮城、岩手のリアス式海岸に沿って、生産地域全域にてサンプル収集を実施しました。中国・韓国地域についても地域別のサンプルを収集し、判別の基礎となる地域別わかめ安定同位体比データは、総数で380(鳴門海域110、岩手・宮城120,輸入150)を確保しました(2010年7月現在)。生わかめに加え、由来の明確な塩蔵・乾燥わかめサンプルの総数は、400に迫ります。現在は、さらに伊勢、千葉・神奈川、長崎等の他の府県産のデータも加え、現在追加中の分析データを加えると本年度の最終的なデータベース規模は800(完了8月予定)を越えます。このデータ群で、判別の基礎となる地域データを構成します。 特に国産判別の重要性から、サンプル採取においては、採取地のGPSデータ、他の生物サンプルなども採取し、基礎データを充実しています。 現地で、実際に生育しているわかめそのものを採取する事で、国産わかめ判別では、確実な判別用データが得られます。 このようなサンプル採種は、海藻では、わかめの他、ひじきなどで実施されています。 同位体研究所は、わかめやひじきのみならずサンプル採種においては、他の海藻・海草類、海洋生物の収集を実施し、沿岸養殖における安定同位体比の分布の詳細な検証を実施しています。 例えば、鳴門、岩手、宮城などでは、「どの浜のわかめ」という詳細区分を保有しています。 鳴門、岩手、宮城は、すべての採取地点での画像、GPS記録、検体記録など詳細なバックアップデータを有していますので、産地由来のトレーサビリティにおいては、非常に強力な補完データを有します。

国産判別・・炭素・酸素・窒素安定同位体比による判別

鳴門産の判別精度は、実に98.6%と高精度。 中国・韓国産と三陸産判別は、90.8% 総合的な国産・輸入判別は、93.6%を確保。 

グラフ1.jpgわかめ安定同位体比散布図(わかりやすいようにデータを簡略化しています)鳴門産・三陸産・中国・韓国産の判別には、2段階の判別を実施します。 鳴門産または三陸産表示の場合、まず鳴門産判別分析及び三陸産判別分析を行います。 鳴門産と表示されているのに、鳴門産でないと判別された場合、三陸産・中国・韓国産判別を行います。 鳴門産と三陸産を同時に判別しないのは、まず鳴門産と三陸産のわかめ安定同位体比値の分布が異なっており、これを国産としてひとまとめにして統計解析すると誤判定の確立が高くなるためです。
鳴門産は、その他地域との安定同位体比の分布に特徴的な差異がある事、各養殖場についても詳細なサンプルデータを保有しており、まず鳴門産にての判別を行う事で、「鳴門産わかめ」表示の表示確認は完了します。尚、同位体研究所の研究により、香川、愛媛、広島、兵庫などの瀬戸内海地域産のわかめについても、鳴門産と同様の安定同位体比を示す事を確認しています。 これらの瀬戸内海沿岸地域のわかめは、生産量が少量であり、かつ鳴門産と表示する価格メリットはなく、本検査においては、特にこれらの地域の判別は対象とせず、もし検査された場合には、鳴門産と判別されるという事を注記します。鳴門産と近い値を持つわかめは、他にも和歌山産などもありますが、絶対量が少ない事から、同様に全体として判別に大きな影響を与える事はないと判断しています。

次に、鳴門産でないと判別された場合、三陸産と中国・韓国産判別を実施します。 このように2段階で各産地表示は確認される事になります。

三陸産における相違(岩手と宮城)・・差異は認められるがその差は小さい。 養殖海域の差が主要な要因

三陸産として販売されるわかめには、岩手産と宮城産があります。 この両地域についても、各地域別サンプルを比較した結果、外洋性の湾と内海性の湾という差は認められ、差異はありますが、その差は小さい事から、詳細な判別にはより大規模なサンプルが必要となります。 この点から、岩手産と宮城産については、参考として、岩手・宮城とそれぞれ生産地域が表示されている場合、当該地域の安定同位体比データとの同一性についての所見を添付しています。
このように三陸・鳴門の実地サンプル収集と標本データにより、国産わかめについて、高精度の判別を可能としています。

国産・輸入判別検査において、表示と異なる産地と判別された場合の対応

別ロットで検査
水産物のロット毎のばらつきも考慮し、別ロットでの確認検査の実施を推奨します。尚、国産と輸入との判別の為の、判別得点が判別境界付近の場合、別ロットでの検査を推奨します。 尚、判別に際して、この判別基準付近の場合、検査報告書に補足が追記されます。 何らかの理由で、国産と輸入品が混合している場合もありますので、別ロットでの確認は有効です。 わかめの場合、それぞれの養殖地域での値は、非常に近似しています。特定の養殖地域由来かどうかは、検体内のわかめ個体の分析値の安定具合でも判断可能です。
安定同位体比による産地判別検査は、高精度ですが、100%の精度ではありません。個体毎のばらつきや、再現性の確認の為にも別ロットでの確認が重要です。 また国産と輸入品が混合された場合などは、同一ロットでの値のばらつきを検証するなどの注意も必要です。複数回の確認検査においても、表示産地と異なる産地と判別される場合は、以下の点に留意して対応してください。
鳴門産でないと判別された場合:

鳴門産とその他の地域の判別精度は、98.6%と非常に高精度です。 100%でないのは、三陸産の内湾産わかめで、鳴門に近い安定同位体比を持つものがわずかですが存在した為です。 中国産・韓国産については、150の中国・韓国わかめと鳴門わかめの本検査での判別実施の場合の精度は、100%でした。 さらに参照用に追加で中国産別ロット200サンプルの判別を実施した結果、同様に100%の精度で判別しました。 従って、鳴門産と表示されているが、検査結果が鳴門産でないと判別された場合には、非常に憂慮する結果と判断されます。 この場合、わかめ由来について、購入先や由来などの詳細な確認を強く推奨します。

尚、三陸産と鳴門産の判別については、三陸産の120検体(自社採取品)について、鳴門産と判別されたものは、5検体でした。 この5検体は、三陸のある内湾地域由来のわかめでした。 この地域を含めても判別精度は97.6%%であり、この点からも、鳴門産と他地域産のわかめの判別は非常に高精度で実施可能です。

三陸産と中国・韓国産の判別

三陸産と中国・韓国産には、類似した値を示す産地が存在します。 三陸外洋養殖わかめについては、精度良く判別されますが、三陸内湾養殖わかめについて、中国・韓国と類似した値を示すものがあります。 この為、判別精度は、鳴門産よりも低下し90.8%となります。 このため三陸産と表示されたもので、検査結果が三陸産でないと判別された場合、別ロットで確認検査を行うなど、統計的な補完の確認検査を強く推奨します。

さらに詳細な確認方法
安定同位体比分析により得られた値は、その地域において大きな変動はありません。 特にわかめのように海洋養殖の場合、養殖地域で特に大きな変動が生じる事はまれです。 わかめがどの浜で水揚げされたのか、またどの養殖地域で栽培されたのかがわかれば、検証は非常に容易です。 当該地域の他の褐色藻類を採取し、安定同位体比分析を実施すれば値の検証が可能です。